1 授業の目的と概要

東日本大震災と東京電力原子力発電所の大事故が起きてから4年が経過した。東北地方で学ぶ学生は、文系・理系を言わず、国公立・私立を問わず、3.11大震災大事故にたいする理解を深めることなしに被災地復興も、再び発生する可能性のある巨大事故に対する心構えも語ることはできない。科学はどこまで理解が進んでいるか、現代技術は科学的知識をどの程度理解しているか、現代技術はどのような安全基準で実用化しているのかを学び、災害発生時における情報伝達技術の問題点と今後の対策、災害後の街づくりに必要な土木建築技術の知識を修得する。また、予期できぬ事態の発生時に即応できる科学的センスを涵養する。

2 学習の到達目標

  1. 巨大地震、巨大津波、原子力発電所巨大事故に対する発生のメカニズムの科学的理解および規模の巨大さ、予知の困難さの会得
  2. 巨大地震、巨大津波の予報と防災、原子力発電所の巨大事故防止と現代工学技術を会得
  3. 巨大災害発生時の情報・物資の流通技術と発生後の街の再建に必要な土木・建築知識の会得
  4. 以上の知識を知識として会得するだけでなく、多くの人との討論を通して予期せぬ応用問題に即応できる能力、経験したことがない災害に際して適切な判断と行動をするための、科学的なセンスの涵養

3 授業の内容・方法と進度予定

できる限り対話形式を多く含む講義・討論とし、現場実習も強調する。

[1]巨大科学と社会の信頼
沢田 康次 東北工業大学前学長
原子力工学、地震工学を含む巨大スケール現代科学の巨大さを真に理解するために、その知識だけではなく、巨大さを身体と心にしみこませる理解方法が必要である。これまでの科学の理解方法を越えた体感的理解の方法を語り討論する。ひとごと的理解から自分ごと理解への転換がなければ、科学技術は社会から信頼されない。現場における技術の対応力が抱える問題点とその解決方法を双方向的に議論する。
[2] [3] 地震学
海野 徳仁 東北大学大学院理学研究科特任教授
1. 地震とは何か?
地震は地下深部で断層が急激にすべることによって発生すると考えられている。しかし、断層がすべる瞬間を直接観察することは不可能である。ここでは、プレートテクトニクスという考え方を基にして、「地震とは何か」について考える。
2.2011年東北地方太平洋沖地震から学んだこと
「東日本大震災」を引き起こしたマグニチュード(M)9.0の超巨大地震の発生メカニズムについて、地震観測やGPS観測などの地球物理学データに基づいて、最新の研究成果をわかりやすく説明する。地震学がなぜM9.0の地震の発生を予測できなかったのか、また、今後の研究課題についても言及する。さらに、新たな地震津波観測システムも紹介する。
[4] 原子核反応と放射能1
田村 裕和 東北大学大学院理学研究科教授
放射線と放射能の基本について理解してもらい、さらに環境汚染とその影響、食品の汚染とその影響、住民の被曝状況、リスクの考え方、などについて説明して、今でも原発事故の影響を受け続ける福島の復興に何が必要かを考えるための契機とする。
 [5] 原子核反応と放射能2
織原 彦之丞 東北大学名誉教授
前半の田村先生の講義の内容を受け放射線と放射能に関する基本の理解にそって、光と同じ電磁波であるガンマ線と荷電粒子の一つであり高速電子からなるベータ線の2種類の放射線と“物質”との相互作用を理解する。このため137Cs、134Cs並びに90Srの原子核から放出されるガンマ線とベータ線のエネルギー測定を講義中に装置を使って行い、放射線の遮蔽や人体への影響など放射能についての理解を深め、あわせて今でも原発事故の影響を受け続ける被害地の復興に何が必要かを考える。
[6] 津波工学
今村 文彦 東北大学災害科学国際研究所所長・教授
1.地震性および非地震性の津波の発生メカニズムを説明する。さらに、深海および浅海での伝播、遡上、沿岸部での増幅機構を理解した上で、ハザード評価を実施する上での必要な手法や内容を紹介する。
2.津波ハザードにより生じる様々な影響や被害を整理する。主因、誘因などに加え、漂流物や火災、地形変動など2次的な影響も説明する。その結果生じる直接被害・間接被害の分類を行い、その評価方法について紹介する。
[7] [8] 災害時の情報通信
安達 文幸 東北大学大学院工学研究科教授
2011年3月11日の大震災時に発生した情報通信ネットワークの問題を分析し、災害に強いネットワークを構築するための技術課題について整理する。そして、具体的な技術アプローチの例を提示し、議論する。
[9] 災害時におけるセンターとしての大学
坂田 隆 石巻専修大学学長
被災地では、大学がボランティアセンター、避難所、復興センターなど大きな役割を果たした。今後、地域における大学のもつべき機能を考える。
[10] 復興まちづくりの課題
平野 勝也 東北大学災害科学国際研究所准教授
人口減少下におけるまちづくりの課題や目標について実例を交えて紹介した上で、復興まちづくりにおける防災システムの制度とその課題を分析し、復興まちづくりのあるべき姿を解説する。
[11] [12] [13] [14] [15] 災害廃棄物や津波堆積物などの有効利用と管理(現場実習と報告会)
今西 肇 東北工業大学工学部教授
野口 真一 一般社団法人泥土リサイクル協会事務局長(ゲストスピーカー)
地震・津波によって発生した膨大な量の災害廃棄物や津波堆積物の迅速な処理と有効利用の問題、同じく膨大な量に達するとみられる放射性物質で汚染された土壌や廃棄物の処理・管理など、様々な地盤環境課題を克服しなければならない。資源リサイクルならびに迅速な復旧・復興に資するという観点から、災害廃棄物や津波堆積物の有効利用に関係する現場の見学を通して、これらの有効利用や管理の在り方について議論を深める。

4 成績評価方法

実習とその発表は原則として全員参加。自分が選ぶ二人の講師が与える課題についてのレポート評価と出席点を集計して単位認定の可否と成績を決める。

5 教科書および参考書

なし

6 その他

なし

コーディネーターより

沢田 康次 東北工業大学前学長