1 授業の目的と概要

東日本大震災という未曽有の災害からの復興・新生に向けて、復興を考える際の基本的な視点と思考の枠組みについて考察する。心理学、教育学、倫理学、歴史学の専門家による講義とともに、現場実習の体験も取り入れ、復興について受講生同士がお互いに議論しあい考える。

2 学習の到達目標

  1. 心理学、教育学、倫理学、歴史学の各分野から提示された「被災」や「復興」に関する基本的な視点、解決されるべき課題を説明できる。
  2. 被災・復興地域等での現場実習から復興の具体的な諸課題を把握し、それらをグループワークによって整理分析して他者にわかりやすくプレゼンテーションすることができる。
  3. 受講生が在学中ならびに卒業後の生き方として、「復興」にどのようにかかわるかを各自の立場からまとめることができる。

3 授業の内容・方法と進度予定

授業は各講師2回ずつの講義形式で行い、1回目の講義において学生からミニットペーパーにコメント・質問を提出してもらい、次回の冒頭に講師が答えるという双方向性の授業をめざす。また、被災地において現場実習を実施し、実習を踏まえたグループワークで復興の具体的課題について整理分析する。各グループは現場実習報告会でそれらの成果を発表しあい意見交換を行う。授業の進度予定は次の通りである。

[1] [2] 復興の心理:被災・復興時の行動と心理
畑山 みさ子 宮城学院女子大学名誉教授
大災害後の被災者および支援者の心理と行動について考え、そこに必要とされる心理社会的支援の基本的考え方を学ぶ。特にここでは、世界保健機関(WHO,2011)の「被災者の心を支えるために」に依拠し、また「ケア宮城」が行ってきた支援の実践例を紹介しながら、被災者の心に配慮した支援のあり方について学ぶ機会としたい。さらに、被災者の心を支えるための具体的方法の一つとしての傾聴の仕方についても、ワークショップ方式で体験学習する。
[3] [4] 復興の教育:大学での人材育成と復興リーダーシップ
森田 康夫 東北大学教養教育院総長特命教授
今回の震災と原発事故を見ると、日本人はマニュアルにしたがって協力して行動することには優れているが、未経験の事態に遭遇した場合に正しい判断ができないという欠点があることが分かる。また、地震学者が地質学者が発見した貞観津波を無視したように、自分の近くのことだけを見ている人が多い。さらに、日本人は課題を先送りする傾向が強く、少子高齢化・大量の債務残高・世界標準から外れた雇用慣行など、未解決の課題が山積している。この様な現状に対して、どの様にすべきかを受講者と共に考えたい。
[5] [6] 復興の倫理:悲しみを超える生─生と死の連関
太田 健児 尚絅学院大学総合人間科学部教授
震災以降の思想界の様々な言説を整理し、M.モースの贈与論、M.アルバックスの集合的記憶論などの古典的理論、ドゥルーズ、ネグリ=ハート(スピノザ論も含む)らの言説なども援用しながら、生と死を視野に入れた“復興”という“思想圏内”の可能性を問うていく。震災から3年以上経過した現在、被災者の方々の生活や考え方は一様ではなく、地域の合意形成の困難さも見受けられる。またボランティアの見直しやボランティアという概念自体の問い直しを主張する立場もある。このような“現実の声”“現場の声”も傾聴し、多角的に議論を展開していく。
[7] [8] 復興と文化財・歴史資料:「ふるさとの歴史」を守る
佐藤 大介 東北大学災害科学国際研究所准教授
東日本大震災では、多くの人々の生命と生活が奪われただけではない。地域の人々が伝えてきた「ふるさとの歴史」の証である、文書記録や古美術品、民具といった文化財や歴史資料が数多く失われ、かつ損なわれた。本講義では、震災後から今もなお続く地域の歴史資料に対するレスキュー活動の現状と、これらの活動から浮かび上がる被災地の歴史文化の復興における課題について学ぶ。また、そのことを踏まえ、地域の歴史資料を将来に伝えていくための課題について考えてみたい。
[9] [10] [11] 被災・復興地域での現場実習
関内 隆 東北大学高度教養教育・学生支援機構教授
太田 健児 尚絅学院大学総合人間科学部教授
6月14日(日)を現場実習日とし、被災地に赴く。名取市閖上地区の被災と復興の現状を視察して地震と津波の影響、その後の復興プロセスについて受講者自らが確認する。名取市内の仮設住宅で生活する被災住民との交流を行い、傾聴ボランティアや作業等の体験ボランティアに参加する。なお、実習地までの往復の移動は借り上げバスを使用し、仙台駅を集合・解散場所とする。
[12] [13] 報告会に向けた報告内容討議・資料作成のグループワーク
関内 隆 東北大学高度教養教育・学生支援機構教授
6月20日(土)にグループワークを行う。現場実習での被災状況視察、被災地住民との交流を通して、被災地の現状を把握し、解決されるべき課題を整理分析する作業を受講生数名のグループごとに行う。グループ内での意見交換、討議などを通して意見の集約を行い、報告内容を固めていく。報告内容が決定した段階で、それらを他者に分かりやすく伝えるプレゼンテーションの方法について工夫を重ねる。以上のようなグループワークに各自がそれぞれの役割を意識して取り組む。
[14] [15] 受講生による現場実習報告会
関内 隆 東北大学高度教養教育・学生支援機構教授
太田 健児 尚絅学院大学総合人間科学部教授
7月4日(土)に現場実習報告会を実施する。被災地の現状視察や被災住民との交流という実地体験を踏まえ、復興に向けて解決されるべき具体的な課題とその対応策等についてグループごとにプレゼンテーションを行う。報告会では、グループ間の意見交換を通して、被災地の復興が抱えている問題群を受講生で共有化することを目指す。
最終レポートの作成
受講生は、講義、現場実習、グループワークと報告会を踏まえ、これからの大学生活においてあるいは卒業後の生き方として、「復興」にどのようにかかわるかを各自の立場からまとめ、最終レポートとして作成する。

4 成績評価方法

成績評価は、学習の到達目標として掲げた3つの到達目標に対して受講者がどの程度達成したのかを評価する。
なお、評価の割合は次のとおりである。

授業への積極的参加度(ミニットペーパーの内容) 40%
現場実習参加・グループワーク・報告会発表 40%
最終レポート 20%

5 教科書および参考書

教科書は使用しない。参考書等については授業の中で紹介する。

6 その他

現場実習については、尚絅学院大学エクステンションセンターからの協力を得て実施する。
第1回目の授業は、5月9日(土)

コーディネーターより

sekiuchi2015