1 授業の目的と概要

震災から復興するために必要と考えられる重要な経済的活動、施策について教えるものです。それは、従来の「経済学」のコースで教えている内容ではありえず、経済学のパラダイムシフトが必要であるという認識の上に立ちます。すなわち、「復興の経済学」とは「新しい経済学」と解釈できます。被災した人々に共感し、被災者の心と経済環境の復興に貢献する「経済学」が求められているのです。

2 学習の到達目標

受講生が、人々の精神的、経済的復興のために必要な諸政策について立案・企画できる能力と政策間の優先順位を判断できる能力を身につける。

3 授業の内容・方法と進度予定

[1] 希望の経済学
佐々木 公明 尚絅学院理事長・学院長
まず人々が“復興の希望”を持てるようにすることが重要。人は苦難に「適応」できるので、復興計画を適切に明示することが重要:東大社研の「希望学」を進化させ、「幸福の経済学」との統合も視野に入れる。
キーワード:希望、幸福、実現可能性、絆、協働。
[2] 人口減少・高齢化地域における交通施設整備
河野 達仁 東北大学大学院情報科学研究科教授
被災地のほとんどの地域で、以前から少子高齢化および転出による人口減少が進んでいる。そこで本講義では、震災復興に重要な交通施設の将来像を検討するとともに、我が国の多くの低密度利用地域における交通整備への示唆につながる提案を目指す。最初に交通ネットワーク整備と人口分布の関連を都市間および都市内についてみる。次に、低密度地域における交通システムの維持のための財源調達方法を探る。
キーワード:少子高齢化、インフラ整備の順番、スピード
[3] 復興の財政・金融政策
鴨池 治 東北福祉大学総合マネジメント学部教授
復興財源の問題、政策金融、二重ローン問題、被災した土地などの国による買い上げ問題などに焦点を合わせ、効果的財政・金融政策を考える。
キーワード:復興財源、政策金融、二重ローン
[4] インフラストラクチャーの復興
河野 達仁 東北大学大学院情報科学研究科教授
インフラストラクチャー施設の整備には、住民と整備を行う公共サイドの間で「動学的不整合問題」が生じる可能性がある。東北地域の被災地域においての防潮堤整備などではこの問題を無視できない。講義では、この問題を説明すると共に、問題による厚生損失の大きさについても陸前高田市の防潮堤整備を例に検討を行う。
キーワード:動学的不整合
[5] 復興の環境・公共経済学
佐藤 公敏 日本ヒートアイランド学会理事
≪経済≫とは「経国済民」または「経世済民」のことであり、「国(世)を治めて、民を救う」という意味を持つ。経済学が、大震災に関わる理由はここにある。知識を得るだけでは無く意識を持つことで、自分と他者を守れる人になれるよう心掛けて欲しい。「公共財」、「外部性」、「世代間公平性」等の、有用と思われる経済学の諸概念と、各人ができることのヒントを提供する。減災、防災の視点から、あるべき人間の社会経済活動を考察する。復興後のエネルギーの利用のあり方についても論じる。
キーワード:減災、防災、環境、エネルギー
[6] [7] 豊かな社会の実現に向けた持続的農林水産業の構築
伊藤 房雄 東北大学大学院農学研究科教授
待ったなしの雇用機会の確保と長期間を要する生産基盤の再生、この時間軸のギャップをどのように調整しながら持続的農林水産業の構築(または復興計画に描かれている農林水産業の実現)を図っていくのか、またそこでの行政や関係団体等の果たすべき役割とは何か、解の導出は容易ではないが、復興の過程で避けて通れない課題であり、仙台東部地域を対象に考究する。
キーワード:豊かな社会、賢い消費者の創造、持続的農林水産業、人材育成、効率性、共感、恊働、共生、雇用確保、基盤整備、合意形成、支援のあり方
[8] 制度の破壊と構築
髙橋 真 尚絅学院大学総合人間科学部教授
震災を制度の破壊として捉え、新たな制度の構築(復興)に向けた道筋について、制度経済学の視点から探っていく。その際、現実の復興プロセスについても、みなさんで考えていきましょう。
キーワード:制度的調整、参加システム、制度の構築
[9] 災害の産業・人口への影響分析
米本 清 高崎経済大学地域政策学部准教授
復興に対する経済学の役割としては、
(1)被害状況の把握
(2)今後の変化(特に政策が行われない場合)の予想
(3)政策効果の予想と提言
などが考えられる。復興にあたってはこれらを月単位のスピードで分析する必要があるが、信頼性が高く詳細なデータを入手することは難しい。被災地の人口・経済状態の把握に関わる手法や、実際に推測した数値等を紹介する。
キーワード:人口動態・経済被害と回復状況の把握
[10] 市民ファンドによる被災企業の復興と市民参加
野崎 明 東北学院大学経済学部教授
クラウドファンディング(市民ファンド)と従来の資金調達方法との違いを中心に前者の特徴についてより詳しく説明した後、実際にクラウドファンディングを通してファンドを利用した被災企業とファンドを提供した市民との社会的な関係について、担当者のフィールドリサーチに基づいた具体的な事例を挙げながら論ずる。
キーワード:クラウドファンディング(市民ファンド)、贈与の経済、ソーシャルキャピタル、レジリエンス
[11] 復興の財政・金融政策
鴨池 治 東北福祉大学総合マネジメント学部教授
復興財源の問題、政策金融、二重ローン問題、被災した土地などの国による買い上げ問題などに焦点を合わせ、効果的財政・金融政策を考える。
キーワード:復興財源、政策金融、二重ローン
[12] 復興の金融論
折原 裕 東北学院大学非常勤講師
震災直後の政府・日銀、銀行の対応、現在までの公的金融支援と金融機関による支援や私的金融支援を振り返り、今後の課題について考える。
キーワード:復興金融、公的金融支援、金融機関の支援、私的金融支援
[13] 復興事業と建築・土木の経済学
千葉 昭彦 東北学院大学経済学部教授
復興事業の遅れに関しては、建築・土木業界の構造的な問題が指摘されている。しかし、この業界の構造は復興事業だけではなく、それぞれの地域社会・地域経済の基盤となるインフラの今後の維持・整備にもかかわる問題ともなる。震災から未来を展望するひとつとして、建設・土木業の未来の姿を考える。
キーワード:建設不況、人手不足、入札不調、シビルエンジニアリング
[14] 産業の復興
米本 清 高崎経済大学地域政策学部准教授
産業連関分析・地域モデルによる分析によって、地域ごとに今後の人口・経済状態変化を予想する方法や、政策の効果を予測する方法を紹介する。
キーワード:産業連関、地域モデル
[15] 供給制約を考慮した経済モデル
佐々木 公明 尚絅学院理事長・学院長
大震災後の電力供給制限は実現するGDPの決定に大きな影響を与える事が明らかになった。このことは経済予測や経済評価のためにこれまで用いられてきたケインズモデルは適切でない事を意味する。供給の潜在能力を推定することが求められる。新しい計量経済モデルを提案する。
キーワード:潜在生産能力、ケインズモデルの限界

4 成績評価方法

出席状態によって 40%
課題レポートの成績によって 60%

5 教科書および参考書

なし

6 その他

第1回目の授業は、9月19日(土)

コーディネーターより

佐々木 公明 尚絅学院大学 学長